地域づくりインターン生 佐藤 里美
体験結果レポート

 佐藤 里美

  在籍校 : 大阪市立大学文学部史学地理学科 22歳  
派遣地域 : 福島県相馬郡飯舘村(B-3)
  派遣期間 : 平成12年8月1日~8月31日(31日間)  
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派遣地域について
 飯舘村は福島県の地域区分から「浜通り地域」に属し,県の東北部,阿武隈山系北部の丘陵地帯に広がる標高220~600mに生活基盤を持つ農山村である。気候は年平均10℃,年間降雨量1300mm前後で,夏は涼しく過ごしやすいものの冬の寒さは厳しく,初霜が10月下旬,晩霜は5月中旬まであり,農作物に大きな被害を及ぼすことがある。
 人口は,合併当時(昭和31年)の11,403人から年々減少を続け,平成12年6月現在では7,491人となっている。飯舘村はかつて馬産地として名をはせていたが,農林業の機械化や自動車の進展等により,現在の農業に移行している。農業の主要作物は,水稲,タバコ,畜産であるが,近年,高冷地の条件を生かした,野菜,花卉の振興に力を入れ,冷害等(特に初夏から夏にかけて吹く「やませ」と呼ばれる冷たい偏東風)に強く,危険分散も兼ね複合経営を推進している。飯舘村の特産品は,飯舘牛,御影石,高原野菜(青首大根・インゲン・きゅうり),花卉(トルコギキョウ・リンドウ),キムチ,吟醸酒飯舘(飯舘村産米使用)等がある。
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体験内容
きゅうり栽培(→出荷作業,収穫)
炭焼き(→炭出し,釜入れ,スミスゴ作り)
花卉(→トルコギキョウの出荷作業)
村まつりの準備と参加(→テント張り,雑用)
直接販売 (→ばんかた農市・福島ビッグフェアの売り子)
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活動内容紹介
きゅうり栽培(会田征男さん 栽培2年目 ハウス10棟)
芯とめ
→これから伸びようとする芽を摘み取ること。そうすることによって養分が実の方に行き渡り,きゅうりがぐんぐん成長することができる。ゆえに人工的にきゅうりの成長を調節することができる。

葉とり
→きゅうりに日光がまんべんなく当たるように余計な葉を取ること。古い葉ほどトゲが痛いので作業はゴム手袋が必要。

きゅうりとり
→おおよそ20cm以上のきゅうりをとる。朝は4時過ぎからと,夕方3時以降の2回収穫する。きゅうりは夜中成長するらしく朝どりの方が夕どりより多い。

箱詰め
→納屋などの直射日光の入らない,涼しい場所にきゅうりを保管し,箱詰め作業に取り掛かる。今朝もぎたてのきゅうりをまっすぐ伸ばす作業から始める。一見,手間がかかりそうだがまっすぐ伸ばすことによって,B級品がA級品に格上げ,見た目がよくなる,おいしそうに見える,箱詰めしやすいなどの利点がある。一箱に52本(下段13本,上段12本,横1本×2)をビニールシート(鮮度を保つ,水分の蒸発を防ぐ)に入れていく。おいしそうに,きれいに並べることがポイントである。等級はA・B・L・Sの他に10kg用箱(曲がったきゅうりなど自由にいれていい箱)もある。ちなみに箱代70円,ビニールシート11円(各1部)となっている。

出荷
→出荷時間は10時,時間厳守となっている。10時以前であれば何時でもいいが,会田さんはいつも8時頃には出荷に出ている。伝票を提出し,きゅうり箱を荷台に載せながら,ライバル農家の出荷状況を確認したりする場でもある。
花卉(赤石沢忠則さん トルコギキョウ栽培6年目 ハウス7棟)
トルコギキョウの出荷
→朝早く花を摘み(時間短縮のため根元から引き抜く),根をカット,根から30cmの葉を落とし,一番花(一番下から咲いている花),上の小さいつぼみも咲かないのでカットする。そのつぼみのカットは細かい作業で肩が凝る。花屋でもできる仕事だがしないで出荷すると安い値がついてしまうし,見た目に大きく響くことなので,なくてはならない作業である。出荷には以下のような諸経費がかかる。ダンボール220円,ビニール(細かい穴が空いていて通気性がよい)10円,スポンジ(水をふくませて使用)45円×3である。お盆前がピークで1箱10本入×5で最高17000円,少なくとも1本100円切らなければいいという。出荷先は福島,東京の他に沖縄がある。飯舘のトルコギキョウは寒暖の差が大きいため花の色が鮮やかであることや,長持ちすることなどから,航空運賃が高くてもそれなりにもとはとれる。
直接販売
「ばんかた農市」
→毎週土曜日,15時過ぎから福島市のニュータウン,南向台(なんこうだい)にて今朝とれたての野菜や花を持ちよって販売する。この活動は飯舘村単独で行っている。会員になっている村人が順番で販売をする。お盆前はなにかと物入りで花などは飛ぶように売れてしまう。今回は赤石沢さんのお手伝いでトルコギキョウ,ステラを各300円分,計100本弱を完売した。なにも宣伝しなくても顧客の信頼を得ているためか箱を開けたとたん手が伸びてきて,すぐさま空になるような状態であった。その日のうちに集計し,売り上げは各自の口座に振り込まれる。東京などへ出荷した方が収益は上がるらしいが,待っている顧客が喜んでいるのを見るとやめられないし,消費者とのふれあいから「やりがい」を感じ取ることがあるようだ。
炭焼き
飯舘村では第4次総合振興計画の1つとして,20ある行政地区に1000万円を配り,そのお金の使い道は各地区に住む住民の話し合いで決めるという形をとっている。1000万円の主な用途として,防災システムを整備したところもあれば芸能保存や,地区案内板設置,農作業時に便利な時刻を知らせるチャイムを設置したところなどがある。村の北西に位置する前田地区では,地元で利用してきた湧き水を整備したほか,かやぶき屋根の体験型産地直売所「ふれあい茶屋」と炭焼き体験ができる釜を設置した。ふれあい茶屋は飯舘村の中心部臼石地区から月舘町を結ぶ県道沿いに立地しているため客足が途絶えることはない。野菜の販売は農家の奥さんが,炭は老人会が担当している。利益は二の次で村を訪れた人と地元住民の交流の場とすることが最大の目的であるという。炭焼きのプロから様々な指導を受け,炭出しから,釜入れ,スミスゴ(木炭の入った俵)作りを体験した。炭焼き体験により私は,木にも適材適所があって一つも無駄がないこと,そしてそれを熟知した人間の知恵に感動するばかりであった。

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地域への提案
 「ばんかた農市」や村まつり,「福島ビッグフェア」の3つのイベントに参加して感じたことをここでは述べたいと思う。イベントというものを,飯舘村をさらにアピールするチャンスであるという認識に欠けていることを感じた。「村おこしで頑張っている村」としてマスコミに多々取り上げられ,イベント会場に訪れた方は「飯舘村」という名前は知っていても,アクセス面はどうなのか,今後,飯舘村でのイベントスケジュールはどうなっているのか等,旬の情報を得たいと考えているはずだ。なのに3つのイベントとも地図どころか観光パンフレットを設置するのが遅れてしまい,わざわざ尋ねてくる方もいらっしゃった。今後は,イベントという集客の機会を,物を売り込むだけではなく,村内の情報を盛り込んだ有効な活用を期待したい。
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体験を通して
 山形県の農村で育った私は,都会の生活に憧れ,大学進学を機に大阪に移り住んだ。地元の短大を親にすすめられても都会の生活を送ってみたかった。5年目の大阪暮らしの今,苦悩に直面した時や,日常生活の中で自己を見つめようとする時,本能的に求めるものは,自分が生まれ育った故郷であることを,飯舘村での農業体験,農村生活を通じて再認識できたことが大きな成果であった。
 現在,私は最終学年ということもあり,卒論や就職のことで頭がいっぱいだった。内定をもらい,卒論も順調な友人を見ていると,無意識でも自分の中に焦りがあった。我武者羅に面接を受けてみても結果は芳しくなかった。周りと同じようにできない自分に苛立っていた。そんな私が生まれて初めて接する飯舘村の農村生活から「自分のペースで生きること」を教えて頂いた。農業に誇りを持って従事する会田さんや赤石沢さんの姿勢があったからこそ,単調な農作業にも耐えることができた。またホームステイ先の会田さん夫婦との生活を通して,「親のありがたさ」を実感した。
 こうしてみると,多くの方々に助けてもらい,生かされて,今の自分があることを改めて感じ,これから先,どんなことがあっても飯舘村のことを思い出したら立ち直れる自分がいることが,私にとって貴重な財産となっている。
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